展開地域名: 新潟県燕市
解決すべき課題
■燕市には、金属加工を中心とした製造業を営む中小企業が約 1,700 社集積しており、複数の企業が協力しながら1つの製品を作り上げるサプライチェーンを形成。この分業によるものづくりは、変化に強く、各社の技術を特殊化・高度化できる一方、受発注内容や出荷状況、請求書などの様々な取引情報のやり取りが発生する。また、製造工程の進捗状況や他社の設備稼働状況の把握も難しく、生産性向上のボトルネックとなっていた。これらの課題を解決するには企業単体では限界があった。
● 燕市の企業は、一部の先進企業を除き、バックオフィスのデジタル化が遅れている傾向。これまで1つの製品を作る際、見積や受発注、出荷や請求など、業務プロセス毎に帳票を作成し、FAX や電話等のアナログな方法でやり取りすることが慣習となっていた。従業員は帳票作成に膨大な労力を費やし、作成した帳票は紙に出力して保管、問合せがあれば探すといった現状であった。
解決の手法
■令和元年(2019)度産官学連携のコンソーシアム「燕市 IoT 推進ラボ」を設立し、本システムの構築、DX による課題解決を目指すこととなった。(燕市「燕市DX推進ラボについて」参照。)
● 燕市IoT推進ラボ:
・IoT を始めとした最新技術の動向や活用事例等の情報共有、産学官金によるネットワークづくりに取り組むとともに、市内における先進的なプロジェクトを推進し、未来(次世代)に向けた価値を創造するものづくり産地を目指すことを目的としている。
・セミナー・研究会の開催、実証実験の実施による意識啓発、(仮称)燕版共有クラウド(SFTC (Smart Factory Tsubame Cloud) )開発・運用による基盤構築に取り組む。
ー燕版共用クラウド(SFTC (Smart Factory Tsubame Cloud) ):各企業でデータを格納したり、企業間でそのデータを活用したりするためのクラウド。概ね 3 年をかけて開発し、市内全体のデジタル化を推進する。
・専門的有識団体(大学)をアドバイザー、実際に取組む企業等(ユーザー企業、ベンダー企業、農業関係者等)をプレイヤーとして分類。サポーターとアドバイザーが一体となってプレイヤーを支援する。
・国、県、他市などのラボ外の事業の情報もサポーター間で共有するとともに、特に補助金などプレイヤーに直結する情報は、メルマガ、会報、集会などを活用してプレイヤーにも提供する。
● 受発注情報や製造進捗状況、設備稼働状況等を取引企業間で共有するクラウドサービス「SFTC」を 3 年間かけて構築、令和 4 年度から本稼働を開始。
・SFTC を活用すると、クラウドを介して、取引に必要な情報を企業間でリアルタイムで共有することが可能になり、各種伝票の作成や管理が不要となり、業務の改善や生産性アップが期待できる(燕市「燕版共有クラウドSFTC (Smart Factory Tsubame Cloud) 」より)。
ー誤入力やそれに付随する確認業務を減らすことも可能である。
ー注文状況・製造状況の見える化による業務の無駄・ムラを防ぐとともに、データ蓄積が可能となったことで、容易にデータ検索可能なほか、需要予測や生産計画策定にも活用が可能。
ーシステム導入に必要なものは、インターネットへの接続環境とシステムを運用するための PC・タブレット等のデバイス、アカウントに設定するメールアドレスのみで、テレワークにも対応可能。
解決における工夫点
・本システムは産学官金の連携により実現しており、システム構築には、燕市 IoT 推進ラボ会員企業の実際の取引情報を用いた実証実験により、生の声を拾い上げながら機能検討を行った。
・本システムの運用経費については、ユーザー企業からの利用料金で賄っており、事業の自走を実現している。利用料金は利用内容や企業規模に合わせた段階的な設定とすることで、企業負担を最小限に抑える工夫をしている。
・月額利用料金:
ー受発注機能:3 万円、発注機能のみ:2 万円、受注機能のみ:1 万円、受注機能のみで従業員 10 人以下:5 千円。
・本システムは、中小企業共通 EDI の標準仕様に基づいた取引項目を管理しており、取引項目のマッピング機能により、企業毎に異なる取引情報のやり取りにも対応可能。
ー中小企業共通EDI(Electoric Data Interchange:電子データ交換):
IT の利用に不慣れな中小企業でも、簡単・便利・低コストに受発注業務の IT化を実現できる汎用性の高い仕組み。
・また、各企業は出力項目を選んでデータ出力(csv、json)可能。各企業の基幹システムへスムーズに連携できるようにした。
・本システムでやり取りされる情報は、直接関わりのある企業間にのみ共有される仕組みであり、関わりのない企業に情報が公開されることはない。
事例による成果
【SFTC導入済みと導入準備企業】※2022年夏のDigi田甲子園応募時点
・導入済企業数 5社(製造業)
・導入準備企業数 26 社(製造業、卸売業ほか)
【SFTCの効果】
・実証段階における参加企業の対象業務時間の平均短縮割合 約 70 %
・属人化していた事務作業の進め方や様式が社内で統一されることによるミス削減や、ペーパーレス化による効率化、コスト削減効果を実感しているなどの声があった。
● 2022 年 10 月に、「Smart Factory Tsubame Cloud(通称SFTC)」が、全国中小企業クラウド実践大賞2022 にてクラウド実践奨励賞を受賞(株式会社ウイングによる開発・運用)。
ー「全国中小企業クラウド実践大賞」:クラウドを活用して新規事業創造、収益向上、業務効率化を実現した中小企業等の実践事例を発掘し、広めていくためのプロジェクト。
(全国中小企業クラウド実践大賞「クラウド実践奨励賞【株式会社ウイング】自治体主導で実現!新潟県燕市で生まれた受発注業務のクラウド化 」参照。)
【今後の展望】
・随時ユーザー企業の要望を踏まえシステム改善を行うほか、取引データ蓄積後は、AI による需要予測や生産計画策定に役立つ機能拡張等を行う予定。
・「燕市 IoT 推進ラボ」は令和4年度中に「燕市 DX 推進ラボ」へ移行予定。
・市は、本システム導入に伴い発生する移行経費の一部を補助するとともに、産業支援団体や金融機関と連携し、導入企業を増やしていく
事例が与えた影響
システムの導入により、導入企業の生産性向上が図られるとともに、導入企業が増えるほどシステム全体の運用コストが下がるなど、後続企業の導入メリットが増大し、好循環が生まれることが見込まれる。
事例の継続性
継続運用中
事例の運用期間
2022 年 4 月~継続運用中
参考資料
本事例は、「2022年度 夏のDigi田甲子園 新潟県の取り組み」を中心として、以下の資料を参照して編集しています。
※ 以下の資料の参照先は、調査時点でのものです。参照先の構成によっては、リンク切れとなっている場合があります。あらかじめご承知おきください。
■デジタル田園都市国家構想 DIGIDEN
●2022年度 夏のDigi田甲子園
・新潟県の取り組み
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/digitaldenen/archives/koushien/chiiki/niigata.html
・推薦調書
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/digitaldenen/archives/koushien/chiiki/pdf/15-2.pdf
●デジ田メニューブック
・燕版共用受発注システム「SFTC(Smart Factory Tsubame Cloud)」構築・導入促進事業
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/digitaldenen/menubook/2022_summer/0050.html
■燕市
・「夏のDigi田(デジデン)甲子園」本選に出場中! 更新日:2022年07月19日
https://www.city.tsubame.niigata.jp/soshiki/somu/1/12/20/12778.html
・IoT推進ラボ
https://www.city.tsubame.niigata.jp/soshiki/sangyo_shinko/2/kougyou/1/index.html
・燕市IoT推進ラボについて 更新日:2023年04月01日
https://www.city.tsubame.niigata.jp/soshiki/sangyo_shinko/2/kougyou/1/737.html
ー燕市IoT推進ラボチラシ
https://www.city.tsubame.niigata.jp/material/files/group/15/lab_tirasi.pdf
(2023/7/12現在非表示。以下リンク先に移行した模様)
↓
https://www.city.tsubame.niigata.jp/material/files/group/15/DXchirashi.pdf
ー燕市IoT推進ラボの取組み
https://www.city.tsubame.niigata.jp/material/files/group/15/100886415.pdf
(2023/7/12現在非表示)
ー燕市IoT推進ラボ ラボメンバー(プレイヤー)リスト(令和4年11月4日現在)
https://www.city.tsubame.niigata.jp/soshiki/sangyo_shinko/2/kougyou/1/737.html
・燕版共有クラウドSFTC (Smart Factory Tsubame Cloud) 更新日:2022年04月15日
https://www.city.tsubame.niigata.jp/soshiki/sangyo_shinko/2/kougyou/1/12004.html
ー燕版共有クラウドSFTCパンフレット
https://www.city.tsubame.niigata.jp/material/files/group/15/220921SFTCpamphlet.pdf
・セミナー情報 更新日:2022年04月15日
https://www.city.tsubame.niigata.jp/soshiki/sangyo_shinko/2/kougyou/1/12001.html
ー燕市IoT推進ラボ第2回全体会議&IoT活用事例セミナーのチラシ おたくの工程管理どうなってます?
https://www.city.tsubame.niigata.jp/material/files/group/15/100884552_02.pdf
ー2020年10月27日開催「燕市IoT活用事例セミナー」
https://www.youtube.com/watch?time_continue=44&v=CCdxGBnB8H0&feature=emb_logo
●燕市広報
・燕市IoT推進ラボ IoT活用事例セミナー 〜受発注業務のムダを省く〜
https://www.youtube.com/watch?v=CCdxGBnB8H0
■株式会社ウイング
・ WeING DX (燕版共用クラウドSFTC専用ウェブサイト) 社長!その 手書き伝票やめませんか?
https://weing-dx.com/sftc/
・燕市IoT推進ラボ様 事例 SFTC(Smart Factory Tsubame Cloud)が燕市を変える!
https://weing-lowcode.com/dl-form-7/
・BLOG 燕版共用クラウドSFTCが熱くなってきた!! 2021.10.21
https://www.weing.co.jp/blog/%E7%87%95%E7%89%88%E5%85%B1%E7%94%A8%E3%82%AF%E3%83%A9%E3%82%A6%E3%83%89sftc%E3%81%8C%E7%86%B1%E3%81%8F%E3%81%AA%E3%81%A3%E3%81%A6%E3%81%8D%E3%81%9F%EF%BC%81%EF%BC%81/
・中小企業のための「はじめてのDX」第2回「SFTCで町ごとDX! No2」
https://www.youtube.com/watch?v=XhKJ7vlWopg&t=994s
・全国中小企業クラウド実践大賞2022のモデル事例にSFTCが認定されました 2022.08.29
https://www.weing.co.jp/2022/08/29/%E5%85%A8%E5%9B%BD%E4%B8%AD%E5%B0%8F%E4%BC%81%E6%A5%AD%E3%82%AF%E3%83%A9%E3%82%A6%E3%83%89%E5%AE%9F%E8%B7%B5%E5%A4%A7%E8%B3%9E2022%E3%81%AE%E3%83%A2%E3%83%87%E3%83%AB%E4%BA%8B%E4%BE%8B%E3%81%ABsftc/
■中小企業庁
・中小企業共通EDI
https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/gijut/edi.htm
■全国クラウド実践大賞
・開催レポート 関東・信越大会 2022年10月12日
https://cloudinitiative.jp/kantoshinetsu-contest-2022
・クラウド実践奨励賞【株式会社ウイング】自治体主導で実現!新潟県燕市で生まれた受発注業務のクラウド化 2022年10月12日
https://cloudinitiative.jp/kantoshinetsu2022/wing_tsubakishi
関連する図表・動画
●デジタル田園都市国家構想実現会議事務局
・【新潟県燕市】燕版共用受発注システム「SFTC(Smart Factory Tsubame Cloud)」構築・導入促進事業
https://www.youtube.com/watch?v=czgXMeWeYjE
事例に関する問い合わせ先
商工振興課
Tel: 0256-77-8232
E-mail: shoko@city.tsubame.lg.jp
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