栃木県小山市「全国初! LINEを活用したモバイル定期券・回数券によるキャッシュレス化でコミュニティバス「おーバス」の利便性向上」

展開地域名: 栃木県小山市

分野:
住民窓口サービス
交通
地域活性化
キャッシュレス決済
キーワード:
自動化
業務効率化
ワークフロー
IoT
スマホアプリ活用

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解決すべき課題

■小山市内の公共交通は、コミュニティバス「おーバス」を、路線バス 14 路線とデマンドバス 5 エリアにより運行している。市民等バス利用者からは、「おーバスに IC カードを導入してほしい。」という要望が多々ある。しかし IC カード導入には億単位の予算、車両搭載機器の維持管理費を要する問題があった。

● 多くの地方都市は、財政難のため IC カード導入は難しいと考えられる。また専用アプリを開発したとしても、バスに乗るのにわざわざ専用アプリをインストールする人は少ないことが想定され、高齢者にはハードルが更に高い。

 【おーバス】:

 ・おーバスは、交通空白地域解消を目的に、平成 14 年に小山駅東口循環線が運行を開始し、民間路線バスの撤退による代替路線の新設、郊外のデマンドバス化等を経て、平成 23 年におおよそ現在の運行体系が確立された。

 ・現在では、利用者のご要望に合わせたダイヤ改正や経路変更、混雑緩和に向けたバスの大型化、利便性向上のためのバス停の増設等を進めた結果、年々利用者が増加している。

 ・市は 2018 年度から地方創生推進交付金を活用し、おーバスの利用促進に取り組んでおり、この取り組みが、「2020年度グッドデザイン賞」及び「JCOMMプロジェクト賞」を受賞している。

 (小山市「小山市コミュニティバス おーバス」、「グッドデザイン賞及びJCOMMプロジェクト賞を受賞しました」参照。)

解決の手法

■小山市では、市民にクルマ無しでも自由に移動できる環境の整備を目指して、月々約 2300 円で小山市内のバス全線乗車可能になる紙の定期券 noroca を導入している。本定期券サービスは、以下3点に着眼し、noroca 定期券と回数券をスマホアプリ化する課題解決を目指した:

 [1] 使い慣れた LINE アプリを活用し、多世代に普及、

 [2] 定期を提示するだけという紙の利便性を損なわない、

 [3] 車載端末や販売、ネットワーク機器等の設置を省略したコスとダウン。

● 国内屈指の普及率、高齢者も多くが利用している LINE アプリ上で、購入から乗降まで全てが完結するシステム開発を行った。市と東武トップツアーズ ㈱ が、スマホアプリ LINE を活用した市内バス定期券と回数券のスマホアプリ版「スマホ de noroca」を開発。購入から乗降をアプリ内で完結させられる。令和 3 年 10 月 1 日から運用を開始。 システムに LINE アプリを活用するのは全国初。

・紙定期券の利便性を損なわないよう、ユーザーが容易にスマホで定期券・回数券の画面を表示できるよう画面遷移もシンプルに、運転手に見せるだけで乗降できる仕様にした。

・ユーザーは新たなアプリのインストールが不要で、アプリ内でのキャッシュレス決裁(クレジットカード)のため市内に1ヶ所の販売所や運転手から購入する必要がなく、バスに読取端末を置く必要もない。

・IC カードよりも優れた点で、紛失時に手数料なしで再発行が可能、アプリを介してユーザーとのコミュニケーションが可能。

・バスの現在地(バスロケ)や時刻表が確認できる。

・利用者・運営者の利便性向上のため、以下の機能を設置:

  1.配信機能: LINE登録者に対して地域・年代などのセグメント配信が可能。

  2.クーポン機能: 周辺店舗との協業で地域全体の活性化に繋げる。

  3.アンケート機能: バス利用者の不満点を解消し、バス利用の促進に役立てる。

  4.分析機能: 利用者の属性(年代・性別)を基にバス利用者の傾向を分析する。

  5.よくある質問機能: よくある質問を LINE で自動回答。電話でのお問い合わせ対応時間を削減する。

・ユーザーへ地域の店舗やタクシー割引等サービス付加、サービスやお出かけの情報発信。

解決における工夫点

・地域の店舗やタクシーでの割引等サービス付加、イベントやサービスの情報を発信することで、人々の外出・消費を促す。

・車の運転に不慣れで、苦手意識を持つ方(特に女性)に対して、自由に移動できる環境を提供し、地方暮らしのハードルを下げることが期待できる。

・LINE を通してユーザーとコミュニケーションを取ることができる等独自の工夫をした。

・グッドデザイン賞などを受賞している小山市固有の資産であり市民誰もが知っている「おーバス」にデジタル技術を活用した取組。

・交通系 IC カードに頼らず、シンプルな仕様だが利便性が高く、LINE アプリ上で購入から乗降まで全て完結という独創的な視点で取り組んでいる。

 ー公共交通のサブスク(年間パス)による小山版 MaaS の実現を目指す。

・運転手にスマホの LINE 画面を提示するだけのシンプルな設計で、老若男女誰もが使いやすい。1 回の乗車が約 80 円で、気軽な住民の外出機会の増加に寄与する。

・本定期券は地域のプラットフォームとして、他の分野のサービスを取り込み、暮らしの利便性向上や地域の商業振興に寄与する。

・システムの維持管理費に、定期券・回数券の販売手数料 5%を支出し、システムを持続可能なものにしている。この手数料は従前の定期券の販売手数料と同額。

事例による成果

● 過大な費用を要さずに、バス乗車券をデジタル化できた。
 
 ー交通系 IC カードと比較して、導入・維持費用の大幅なコストダウンを達成しており、コミュニティバスと地域をつなげ、絆を強化するツールとして同規模の他市町村も参考にすべき事例になればと考える。

● 令和 3 年度(10 月~3 月)総額約 290 万円が電子決済になり、運転手や販売所店員の省力化、運転手の視認確認の負担軽減につながった。

● LINE を通じてバスユーザーへ効率的な情報発信を行うことができた(従来は文書(郵送)で連絡。例えば同様の情報を郵送した場合、約 15 万円/回(1800 人 × 82 円)の郵送費用と発送事務労力を要していた。)

● モバイル定期券保有者は月を追うごとに増加。定期券保有者は 4.7 倍に増加、モバイル定期券シェアは 47 %。商業施設と連携や、タクシーとの連携等今後の展開が期待できる。


【取組後のバス利用者動向】

・バス利用者数増加 (2020 年 73.7 万人→2021 年 83.7 万人)

・バスでのまちなか来訪者数増加(2017 年: 1,726 人/日→2021 年:2,115 人/日)

・まちなかの流動人口増加(2016 年 12 月: 2,600 人/日→2021 年 12 月:4,000 人/日(resas を用いて算出))


【定期券保有者数・モバイル回数券の販売枚数・おーバスLINEアカウントおともだち登録者数】2022.4.30 時点

・定期券保有者 4.7 倍に増加(119 人→ 566 人)、モバイル定期券シェア 47 %

・モバイル回数券の販売枚数:累計 1460 回分(1 回 200 円換算)

・おーバス LINE アカウントおともだち登録者数:1,823 人


● 本取り組みは、2022年度 夏のDigi田甲子園で、インターネット投票結果「実装部門 市」の部門 8 位に選出された。

●「スマホ de noroca」は「2022年度グッドデザイン賞」を受賞。


【今後の展望】

・ 地域プラットフォームとしての活用拡大を目指して、商業施設や他交通機関との連携強化に努める。

・特に令和 5 年度のタクシー割引の実装を見据えて、令和 4 年度に最終実証実験を実施する予定

事例の継続性

継続運用中

事例の運用期間

2021 年 10 月~継続運用中

参考資料

本事例は、「2022年度 夏のDigi田甲子園 栃木県の取り組み」を中心として、以下の資料を参照して編集しています。
※ 以下の資料の参照先は、調査時点でのものです。参照先の構成によっては、リンク切れとなっている場合があります。あらかじめご承知おきください。

■デジタル田園都市国家構想 DIGIDEN

●2022年度 夏のDigi田甲子園

・栃木県の取り組み
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/digitaldenen/archives/koushien/chiiki/tochigi.html

・推薦調書
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/digitaldenen/archives/koushien/chiiki/pdf/09-2.pdf

・夏のDigi田甲子園結果発表
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/digitaldenen/koshien/kekka/2022_summer/index.html

●デジ田メニューブック

・全国初! LINEを活用したモバイル定期券・回数券によるキャッシュレス化でコミュニティバス「おーバス」の利便性向上
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/digitaldenen/menubook/2022_summer/0027.html

■政府インターネットテレビ

・栃木県小山市|全国初! LINEを活用したモバイル定期券・回数券によるキャッシュレス化でコミュニティバス「おーバス」の利便性向上|夏のDigi田甲子園
https://nettv.gov-online.go.jp/prg/prg24657.html

■小山市

・小山市コミュニティバス おーバス 2017年11月30日更新→更新日:2023年2月8日更新
https://www.city.oyama.tochigi.jp/site/o-bus/

・全線共通定期券 おーバスnoroca 2021年9月27日更新
https://www.city.oyama.tochigi.jp/site/o-bus/220075.html

・おーバス「noroca」がスマートフォンで利用できるようになります! 2021年10月1日更新
https://www.city.oyama.tochigi.jp/site/o-bus/254334.html

・グッドデザイン賞及びJCOMMプロジェクト賞を受賞しました 2021年3月1日更新
https://www.city.oyama.tochigi.jp/site/o-bus/234074.html

■東武トップツアーズ

・News Release  
日本初!!LINE を活用したモバイル定期券を発売 ~栃木県小山市 MaaS 事業に協力~ 2021年8月31日
https://www.tobutoptours.co.jp/newsrelease/pdf/information/20210831.pdf

■Good Design Award

・受賞対象名 モバイル乗車券 [スマホ de noroca]
https://www.g-mark.org/award/describe/53997

■足利経済新聞

・モバイル乗車券 [スマホ de noroca] が「2022年度グッドデザイン賞」を受賞 2022年10月7日
https://ashikaga.keizai.biz/release/151046/

■産経新聞

・全国に先駆けたモバイル戦略 コミュニティバス「おーバス」の挑戦 栃木県小山市 2022/1/26
https://www.sankei.com/article/20220126-DKB4MPQY7RPLTIBEDLPCWI6AOE/

関連する図表・動画

●デジタル田園都市国家構想実現会議事務局
・【栃木県小山市】全国初! LINEを活用したモバイル定期券・回数券によるキャッシュレス化でコミュニティバス「おーバス」の利便性向上
https://www.youtube.com/watch?v=rAut5B-nKNg

事例に関する問い合わせ先

都市計画課 新交通・バス推進係
Tel: 0285-22-9293
E-mail: d-tokei@city.oyama.tochigi.jp

本事例についてのご要望

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