展開地域名: 岩手県八幡平市
解決すべき課題
■人口流出に端を発して全国の過疎地で発生している諸問題の解決に資する、地方で生まれたオリジナルの未来技術を実装することによる、デジタル田園都市国家構想に適合した活力ある社会の実現。
● 無医地区の診療所へ医師が赴くために片道1時間半もの時間を費やしている。移動に要する時間は医師にとって大きな負担であるだけでなく貴重な医療資源を空費しながらどうにか下支えをしている状況。医師偏在指標で全国最下位の岩手県の中でも周辺部に位置する八幡平市において、医師確保は非常に重要な問題。
● 独居高齢世帯が増え、地域内における高齢者の日常的な見守りの担い手不足や孤立化などが社会課題として顕在化した。この要因となっているのが、若年層が望む仕事を求めて市外へ流出。
・若年層の人口流出によって、高齢化が非常に深刻な課題となった。国内外の遠隔地にいる家族が実家の祖父母の安否を気にかけていても、容易に知り得る手段がなかった。
● 人口減が国全体のトレンドである以上、個別自治体の努力だけでは限界があり、人が減っても持続可能な社会の基盤づくりが求められている。この先進国共通の課題でもある不可逆な時代の流れを捉え、過疎地だからこそ可能な、次世代の成長産業づくりが求められる。
解決の手法
■人口減でも地域を持続可能にする DX ソリューションを都市部の大企業に頼るのではなく、地場で育てたスタートアップ企業が開発して巨額の投資資金を呼び込むなど、稼ぐ力があるとともに若年層にとっても魅力ある新たな成長産業を創出する「八幡平市メディテックバレー」を形成。
●「八幡平市メディテックバレー」は、岩手県八幡平市に生まれつつある「医療福祉×テクノロジー」を核とした事業の集積地八幡平市が 2015 年度より積み上げてきた IT 分野での起業支援実績を活かし、地域課題を逆手に取った新たな成長産業創出プロジェクトを始動させたもの。
● 八幡平メディテックバレープロジェクト:
八幡平市メディテックバレープロジェクト(正式名称:八幡平市メディテックバレー推進計画)は、過疎地域特有の地域課題の持続的に解決のために八幡平市主催の元で立ち上げられた産官学プロジェクト。最先端のICT技術を活用して地域課題解決を行い、同時に新産業の創出により最先端の技術・知見と投資が集まる医療福祉 × ICTの先進地「メディテックバレー」の形成を目指す。
(Hachimantai Medtech Valley「プロジェクト概要」参照。)
ー【具体的な取り組み】ー
● 市外へ仕事を求める若者の多くは、ICT 関連産業を希望していたことから、自ら起業するための知識や技術を教える市の起業家育成プログラム「スパルタキャンプ」を開催して、国内外から起業を目指す若者を数多く移住へと誘導。
● 緊急時には、離れて暮らす家族や医療・介護機関にメールなどで SOS を知らせる地域の遠隔診療と見守りを目的としたソフトウェア「Hachi」を開発。市販の安価なスマートウォッチを用いてバイタルや位置情報等を収集・蓄積し、健康状態の推移を常時モニタリングできる。(広報はちまんたい Mar. 2020 vol. 297「2社のタッグで家族安心」、Hachimantai Medtech Valley「プロジェクト概要」参照。)
・常勤医師が不在となった診療所の地域住民が当該デバイスを装着することによって健康状態を可視化し、遠隔であっても対面と遜色ない水準での診療を実現。
ー常勤医が不在となった診療所の地域住民に、独自開発したアプリ「Hachi」を搭載した安価な市販のスマートウォッチを装着してもらい、バイタル等を取得・蓄積することで日常の健康状態を常時モニタリング。
● また、同一のソフトウェアを用いることで遠く離れた家族も高齢者の見守りに参画可能となり、過疎地域の持続化に資する仕組みとして社会実装を進めている。
● これらを「スパルタキャンプ」を通じて育てた起業家やエンジニアが開発。国内のみならず世界中から定員の数十倍の応募があり、国内外から起業を目指す多数の移住者を輩出。
【HACHI】:
・AP TECH社が開発した見守りサービスアプリ。
・みまもられる方は、Hachi がインストールされた Apple Watch を着用し普段通りの生活を送るだけ。
・みまもる方の iPhone のアプリとメールに「歩数」「心拍数」「位置情報」などのデータが自動的に送られ、いつでも家族の様子を確認できる。
・一日 144 回バイタルデータを送信することが可能。どこにいても 24 時間見守ることが可能。(「AP TECH株式会社「Hachi」プレス発表会」より)
・アプリ「Hachi」サービスのキャラクターは犬。開発者が「犬が見守ってくれる」距離感がちょうよく感じられたこと、その後、岩手県八幡平市に会社を設立したことから“八幡平市”の“はち”からもらった「Hachi(ハチ)」という犬のキャラクターが誕生。
(AP TECH「SERVICE AP TECHのービス一覧」より。)
解決における工夫点
・医療機器として認可を受けたデバイスでありながらも安価に市販されている機器を用いることで、非常に低廉なコストで構築可能な遠隔診療システムを実現。
→これにより全国各地への横展開が容易であるとともに、医師と家族の課題を一度に解決可能なソリューションとして確立した。
・充電以外の操作をなくし、高齢者でも問題なく利用可能にデザインした。
・ 都市部の大企業に頼るのではなく、人材を育てて地場に成長産業を創出。
・ プロジェクトの中で、データを数千分の一に極小化する独自技術を開発。LPWA など制約の厳しい通信環境での当該アプリ利用を実現したほか、ドローンの携帯電話圏外での飛行や暗号資産など多方面への応用可能性が評価され、ファンドからの大規模投資を実現した。
事例による成果
● 高額な医療機器を使用せずとも、遠隔地の医師が対面と遜色ない診療を極めて低コストに実現。また、独自アプリで実現することによって、地域外にいる家族との絆を強め、デジタルによって新たな家族のあり方を実現した。
●「スパルタキャンプ」を通して、過疎地であることを逆手に取って、社会課題解決につなげる多くのスタートアップを育て、次世代の成長産業を育成した。
【遠隔診療及び遠隔見守り実績】
・遠隔診療実施対象者数:20 人(平均年齢 78 歳)
・有償化後も使用を希望する高齢者モニターの割合: 100%
【IT 人材育成関係】
・スパルタキャンプのエントリー数:388 件(定員 15 人)
・キャンプを機に移住者のあった国:アメリカ、マレーシア、フィリピン等
【今後の展望】
● 八幡平市で確立した、遠隔での診療と見守りのメソッドについて他地域への横展開を進め、医師確保や見守りの担い手不足に悩む全国の過疎地や離島に実装し、人口が減っても安心して住み続けられる社会を実現する。
● 起業家人材育成プログラムを他地域へと拡大し、地域課題を自らのリソースで解決する稼ぐ力のある過疎地を全国に増やす。
● データを極小化する技術の他分野への応用を進め、高効率な疾病予測 AIの開発やドローンの 4G 圏外飛行などを実現する。
事例の継続性
継続運用中
事例の運用期間
2021 年~継続運用中
参考資料
本事例は、「2022年度 夏のDigi田甲子園 岩手県の取り組み 」を中心として、以下の資料を参照して編集しています。
※ 以下の資料の参照先は、調査時点でのものです。参照先の構成によっては、リンク切れとなっている場合があります。あらかじめご承知おきください。
■デジタル田園都市国家構想 DIGIDEN
●2022年度 夏のDigi田甲子園
・岩手県の取り組み
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/digitaldenen/archives/koushien/chiiki/iwate.html
・推薦調書
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/digitaldenen/archives/koushien/chiiki/pdf/03-2.pdf
●デジ田メニューブック
・八幡平市メディテックバレープロジェクト(遠隔診療・見守りDX基盤の構築による持続可能な地域づくり)
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/digitaldenen/menubook/2022_summer/0007.html
●2022年度 夏のDigi田甲子園
・八幡平市メディテックバレープロジェクト
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/digitaldenen/koshien/kekka/2022_winter/0032.html
■八幡平市
・市長の部屋 臨時記者懇談会(令和3年2月)
https://www.city.hachimantai.lg.jp/site/shicho/10885.html
(2023/9/26現在非表示)
・市長の部屋 定例記者懇談会(令和4年8月)
https://www.city.hachimantai.lg.jp/site/shicho/15949.html
・広報はちまんたい Mar. 2020 vol. 297
https://www.city.hachimantai.lg.jp/uploaded/attachment/8154.pdf
ー2社のタッグで家族安心
https://www.city.hachimantai.lg.jp/uploaded/attachment/8167.pdf
ープログラミングが熱い
https://www.city.hachimantai.lg.jp/uploaded/attachment/8156.pdf
■Hachimantai Medtech Valley
・第1回 八幡平市メディテックバレーシンポジウム
https://8mv.biz/202109symposium/
・プロジェクト概要
https://8mv.biz/project/
・第二回八幡平メディテックバレーシンポジウム
https://8mv.biz/
・第1回 八幡平市メディテックバレーシンポジウム全編紹介
https://8mv.biz/symposium-zenpen/
ー八幡平市メディテックバレープロジェクト 第1回 八幡平市メディテックバレーシンポジウム
https://www.youtube.com/watch?v=cjRL9zOlAXg&t=690s
・2022年度スパルタキャンプ開催中!参加者インタビューをご紹介
https://8mv.biz/interview-10-2/
■AP TECH
・Hachi Apple Watch や iPhone を活用した『みまもりサービス』を提供しています。
https://aptechnology.co.jp/service/
・SERVICE AP TECHのサービス一覧
https://hachi.aptechnology.co.jp/
・スマートウォッチを活用して健康管理!1日例つきで紹介 2022年10月28日
https://aptechnology.co.jp/2022/10/28/smart-watch-health-management/
・Hachi誕生秘話
https://aptechnology.co.jp/story/
・第1回 八幡平市メディテックバレーシンポジウムダイジェスト公開! 2021年11月12日
https://aptechnology.co.jp/2021/11/12/symposium-digest1/
■スパルタキャンプ in 八幡平
・https://hachimantai.spartacamp.jp/
・AP TECH株式会社「Hachi」プレス発表会
https://www.youtube.com/watch?v=KLp3LgCOQVI
■地方創生テレワーク 八幡平市起業家支援センター
https://www.chisou.go.jp/chitele/shisaku/office/34.html
■facebook
・みまもりサービス「Hachi(ハチ)」
https://www.facebook.com/Hachi.aptech/photos/a.100262092021646/100262065354982
■起業志民プロジェクト
https://www.kigyoshimin.com/#
・ABOUT
https://www.kigyoshimin.com/#about
関連する図表・動画
●デジタル田園都市国家構想実現会議事務局
・【岩手県八幡平市】八幡平市メディテックバレープロジェクト(遠隔診療・見守りDX基盤の構築による持続可能な地域づくり)
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/digitaldenen/archives/koushien/chiiki/iwate.html
事例に関する問い合わせ先
商工観光課企業立地推進係
Tel: 0195-74-2111(代表)
E-mail: makoto-n@city.hachimantai.lg.jp
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