展開地域名: 長野県塩尻市
解決すべき課題
■本市では、1998 年の民間路線バス撤退以降、市営コミュニティバスを委託運行しているが、人口減少の加速や利用ニーズ（便数、速達性等）との乖離により、利用者数が 2008 年度の約 170,000 人をピークに 2021 年度は約 97,000 人まで減少。さらに、30 人弱の乗車定員に対して一便あたりの平均乗車人員が 2 人以下の「空気を運ぶ路線」もあり、移動需要と供給にミスマッチが生じていた。
また、利用者の減少に拍車をかけるように、大型バスの運行に必要な大型第二種運転免許保有ドライバーの高齢化（平均 61.8 歳、最高齢 73 歳）が進み、長時間に及ぶ労働環境等から慢性的なドライバー不足も深刻な課題となっており、将来にわたり交通弱者等の「生活の足」を確保するため、抜本的な対策が急務となっていた。
解決の手法
■塩尻市及び関係企業等が、高齢者をはじめとする交通弱者等に対して、AI を活用した利便性の高い持続可能な移動手段を構築するとともに、慢性的なドライバー不足の解決に向けた取組みを実施。
● 利用者の「運行本数が少ない」、「自宅からバス停まで遠い」、「行きたい場所にバス停がない」といった多様化するニーズに対して、ルート及びダイヤが決まった定時定路線から、利用者の予約に応じて AI が効率的で最適なルートを生成するオンデマンドバス「のるーと塩尻」への転換を目指す。
● 運行車両を従来の大型バスから普通第二種運転免許でも運転可能な車両にダウンサイジングすることにより、交通弱者の移動手段の確保とドライバーの担い手不足という課題を同時に解決するため、実証運行を 2020 年度から実施。
・本市において、利用者数が極めて少ない「中心市街地循環線」がカバーする約 10 ㎢の対象エリア内において、設置根拠に基づく乗降拠点を 111 箇所（システム設定含む）設置し、非効率路線を抱える地方都市において新たなモビリティサービスの可能性を検証。
● 令和 4 年 3 月 31 日に地域振興バス「中心市街地循環線」を廃止し、令和 4 年 4 月 1 日から「のるーと塩尻」が本格運行へ移行。
（塩尻市「AI活用型オンデマンドバス「のるーと塩尻」の運行について」より。）
●【のるーと塩尻】：
・乗りたい時にアプリや電話で呼べる新しい乗合バスサービス。
・のるーと塩尻の事業主体は一般財団法人塩尻市振興公社。車両運行はアルピコタクシー ㈱、AI 活用オンデマンドバスのプロジェクトマネジメント、オペレーションはネクスト・モビリティ ㈱ が担当（日経BP総合研究所「乗りたいときにアプリで呼べるオンデマンドバス、塩尻市が4月から正式運行」より）。
・車両：SpareLabs 社（カナダ）の配車・運行管理システムを使用、AI が利用データを蓄積・学習し、より効率的な運行が可能となる。
（ロボスタ「2021年9月22日 塩尻市 AI活用型オンデマンドバス「のるーと」の実証運行第2弾を開始 乗降拠点は市内111箇所に増加」、Spare「Spare expands its microtransit operations in Japan with services in Shiojiri and Noshiro」参照。）
運賃（※）：
・大人（中学生以上）200円
・小児（小学生 6 歳以上 12 歳未満）、障がい者、同伴介助者 100 円
・乳幼児 無料
（塩尻MaaSプロジェクト公式サイト、SHIOJIRICITY（長野県塩尻市公式チャンネル）「AI活用型オンデマンドバス「塩尻のるーと」の使い方をご紹介」より。）
※令和 5 年 4 月に運賃設定を変更。
● 令和 4 年度（令和 4 年 10 月 1 日から令和 5 年 3 月 31 日まで）は地域振興バス「みどり湖・東山線」、「塩尻東線」を対象に実証運行を実施。利用状況やアンケートの結果を踏まえ検討を行った結果、令和 5 年 3 月 31 日をもって地域振興バス「みどり湖・東山線」、「塩尻東線」を廃止し、令和 5 年 4 月 1 日から「のるーと塩尻」が本格運行へ移行。
・運賃： 令和 5 年 4 月 1 日より運行エリアの拡大に伴い、7 km 以下・7 km 超で料金設定を変更。割引料金として新たにシニア料金が加わり、小児（小学生）料金を中学生まで対象拡大:
・大人 200 円（7 km 以下）、400 円（7 km 超）
・【新】シニア（75 歳以上） 100 円（7 km 以下）、200 円（7 km 超）※乗車時に「後期高齢者医療被保険者証」を運転士に要提示。
・【拡大】小児（小学生・中学生）100 円（7 km 以下）、200円（7 km 超）
障がい者、同伴介護者 100 円（7 km 以下）、200円（7 km 超）※乗車時に「障がい者手帳」を運転士に要提示。
幼児（未就学児）、乳児（1歳未満） 無料
（塩尻市「AI活用型オンデマンドバス「のるーと塩尻」の運行について」より。）
● オンデマンドバス導入による地域公共交通の利便性向上の結果、高齢者利用に加え、これまで地域公共交通を利用していなかった新たな利用者層を取り込み、持続可能性な地域公共交通体系の構築を目指す。
解決における工夫点
・本プロジェクトでは、設置根拠が不明確であったバス停設置から脱却を図るため、次の 3 つの設置基準を設定し利用状況を確認：
① 生活に必要な医療、商業及び公共施設に設置する「施設型」
② 本市の特産となるワイナリー等に設置する「観光型」
③ 人口密度データを活用し居住が集中するエリアに設置する「人口密度型」
・マーケティング施策の一環として、説明会を約１ヶ月半の間に 24 回開催し、主に高齢者を対象に乗車予約アプリの操作方法を手厚くサポート。
・デジタルデバイド対策として、スマートフォンの操作に不安を抱える高齢者に向けて、電話予約センターを設置するとともに アプリ相談窓口も併せて設置。
・利用データや移動状況データから地域における人の移動実態や乗降拠点の利用状況を可視化・分析することで、データに基づく交通政策立案、地域公共交通の改善・充実化に繋げる。
事例による成果
● オンデマンドバス実証運行結果 （2021/10/1〜2022/3/31）
総乗客数 平均待ち時間 平均乗車時間 アプリ予約率
8,883 人 8.42 分 7.23 分 68.5 %
・総乗客数：1 日当たりの平均乗車人員は 50.2 人で転換を検討していた中心市街地循環線利用者数と比較しても約 5 倍の利用状況。
・待ち時間：予約から配車まで平均 8.42 分と路線バス（1 日 6 便、2〜3 時間に 1 便）と比較しても利便性の高い移動サービスを提供。
・ 乗車時間：AI によるルート生成により目的地までの所要時間を大幅に短縮。
・ 予 約 率：高齢者へのアプリ操作サポートにより高いアプリ予約率を実現
● 本取り組みは、2022年度 夏のDigi田甲子園「実装部門」は「市」の部門でインターネット投票結果 5 位に選出された。
【今後の展望】
・オンンデマンドバス実証運行を年次的に実施し、コミュニティバスからの転換を検証する（実証運行：毎年 10〜3 月まで実施 本格運行：実証運行の結果により翌年 4 月から開始）。
・2022 年 10 月 オンデマンドバス等の移動データを蓄積するデータダッシュボードの構築予定（令和 4 年度 経済産業省「地域新 MaaS 創出推進事業」公募申請済み）。
事例の継続性
継続運用中
事例の運用期間
2022 年 4 月～継続運用中
参考資料
本事例は、「2022年度 夏のDigi田甲子園 長野県の取り組み」を中心として、以下の資料を参照して編集しています。
※ 以下の資料の参照先は、調査時点でのものです。参照先の構成によっては、リンク切れとなっている場合があります。あらかじめご承知おきください。
■デジタル田園都市国家構想 DIGIDEN
●2022年度 夏のDigi田甲子園
・長野県の取り組み
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/digitaldenen/archives/koushien/chiiki/nagano.html
・推薦調書
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/digitaldenen/archives/koushien/chiiki/pdf/20-2.pdf
●デジ田メニューブック
・AIを活用したオンデマンド型地域公共交通システム構築プロジェクト
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/digitaldenen/menubook/2022_summer/0067.html
■政府インターネットテレビ
・長野県塩尻市｜AIを活用したオンデマンド型地域公共交通システム構築プロジェクト｜夏のDigi田甲子園
https://nettv.gov-online.go.jp/prg/prg24846.html
■塩尻市
https://www.city.shiojiri.lg.jp
・塩尻市地域公共交通計画を策定しました ページID：0012350 2021年7月1日更新
https://www.city.shiojiri.lg.jp/soshiki/33/12350.html
・AI活用型オンデマンドバス「のるーと塩尻」の運行について ページID：0011587 2023年1月12日更新
→更新日：2023年4月21日更新→更新日：2023年8月21日更新
https://www.city.shiojiri.lg.jp/soshiki/33/11587.html
・のるーと塩尻パンフレット（令和5年度版）
https://www.city.shiojiri.lg.jp/uploaded/attachment/23154.pdf
・AI活用型オンデマンドバス「のるーと塩尻」のQ&A ページID：0020660 2022年3月11日更新
https://www.city.shiojiri.lg.jp/soshiki/33/20660.html
ーのるーとの使い方・よくある質問に対するQa
https://www.city.shiojiri.lg.jp/soshiki/33/20660.html
・第２８回塩尻市地域公共交通会議兼第１０回塩尻市地域公共交通会議 議事録
https://www.city.shiojiri.lg.jp/uploaded/attachment/21755.pdf
・第２５回塩尻市地域公共交通会議兼第７回塩尻市地域公共交通協議会 次第
日 時：令和３年１２月２１日（火）
https://www.city.shiojiri.lg.jp/uploaded/attachment/15996.pdf
・オープンデータの取り組みについて ページID：0002344 2021年6月28日更新
https://www.city.shiojiri.lg.jp/soshiki/9/2344.html
●SHIOJIRICITY（長野県塩尻市公式チャンネル）
・AI活用型オンデマンドバス「塩尻のるーと」の使い方をご紹介
https://www.youtube.com/watch?v=fLMLHGQ8paE
■塩尻MaaSプロジェクト
https://maas.shiojiri.com/
・2022年度のるーと塩尻運行パンフレット
https://maas.shiojiri.com/cms/wp-content/uploads/2022/03/2022FY_Knowroute1.pdf
・令和3年度AI活用型オンデマンドバスのるーとの実証運行に係る総合評価レポート 資料編
https://maas.shiojiri.com/cms/wp-content/uploads/2022/02/2021FY_ODBreport.pdf
・2021.10.1 お知らせ AI活用型オンデマンドバス「のるーと塩尻」実証運行開始のお知らせ
https://maas.shiojiri.com/2021/10/01/74/
■三菱商事株式会社
・長野県塩尻市でAI活用型オンデマンドバス「のるーと」の実証運行を開始 2020年8月6日
https://www.mitsubishicorp.com/jp/ja/pr/archive/2020/html/0000045785.html
■Spare
https://sparelabs.com/en
・Provide on-demand transportation for all
https://sparelabs.com/en/solutions/microtransit
・Spare expands its microtransit operations in Japan with services in Shiojiri and Noshiro Tuesday, December 15, 2020
https://sparelabs.com/en/blog/microtransit-launches-in-japan
■App Store
・App Storeプレビュー のるーと
https://apps.apple.com/jp/app/%E3%81%AE%E3%82%8B%E3%83%BC%E3%81%A8/id1455155582
■Google Play
・のるーと
https://play.google.com/store/apps/details?id=com.sparelabs.platform.rider.knowroute&hl=ja&gl=US
■国土交通省
・地域新MaaS創出推進事業/地域公共交通最適化に向けたMaaSダッシュボード構築事業（長野県 塩尻市）
https://www.mlit.go.jp/scpf/projects/docs/smartcityproject_metiR404_shiojiri.pdf
■アルピコタクシー株式会社
http://www.alpico.co.jp/taxi/
■ネクスト・モビリティ株式会社
https://www.next-mobility.co.jp/
・2022年3月25日【コミバスからの本格転換実現】長野県塩尻市「のるーと塩尻」正式サービス化 更新日：2022年9月22日
https://www.next-mobility.co.jp/post/shiojiri_honkaku
・2021年9月15日 長野県塩尻市において、第二弾となる実証運行を実施 更新日：2022年9月22日
https://www.next-mobility.co.jp/post/shiojiri2
・2020年11月2日 20/11/01 長野県塩尻市で「のるーと塩尻」実証運行実施 更新日：2021年6月14日
https://www.next-mobility.co.jp/post/20-11-01-%E9%95%B7%E9%87%8E%E7%9C%8C%E5%A1%A9%E5%B0%BB%E5%B8%82%E3%81%A7%E3%80%8C%E3%81%AE%E3%82%8B%E3%83%BC%E3%81%A8%E5%A1%A9%E5%B0%BB%E3%80%8D%E5%AE%9F%E8%A8%BC%E9%81%8B%E8%A1%8C%E5%AE%9F%E6%96%BD
■MaaS Tech Japan
・事業紹介 2022年12月9日
https://www.its-jp.org/wp-content/uploads/2022/12/hidaka.pdf
■日経BP総合研究所
・乗りたいときにアプリで呼べるオンデマンドバス、塩尻市が4月から正式運行
AI活用型オンデマンドバスと従来のコミュニティバスを組み合わせ運行 2022.03.09
https://project.nikkeibp.co.jp/atclppp/PPP/news/030302339/
・第16回 長野県塩尻市：コミュニティバスからオンデマンドバスに転換、自動運転も視野に
2021.01.19
https://project.nikkeibp.co.jp/atclppp/PPP/052500076/011300025/?P=3
■PR TIMES
・AI活用型オンデマンドバス「のるーと塩尻」が、長野県塩尻市で令和４年４月１日から本格運行。地域振興バスと「のるーと塩尻」を組み合わせた効率的な交通網の構築を目指します 長野県塩尻市（塩尻市役所） 2022年3月1日
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000029.000072
・塩尻市はAI 活用型オンデマンドバス「のるーと」の有料での実証運行第２弾を、10月1日（金）から半年間、市内でスタートします〜 市民の利便性向上と地域公共交通の DX を目指す 〜 長野県塩尻市（塩尻市役所） 2021年9月22日
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000015.000072283.html
■産経新聞
・AI活用型オンデマンドバス「のるーと塩尻」が、長野県塩尻市で令和４年４月１日から本格運行。地域振興バスと「のるーと塩尻」を組み合わせた効率的な交通網の構築を目指します 2022.3.1
https://www.sankei.com/economy/news/220301/prl2203010419-n1.html
■ロボスタ
・塩尻市 AI活用型オンデマンドバス「のるーと」の実証運行第2弾を開始 乗降拠点は市内111箇所に増加 2021年9月22日
https://robotstart.info/2021/09/22/on-demand-bus-knowroute.html
関連する図表・動画
●デジタル田園都市国家構想実現会議事務局
・【長野県塩尻市】AIを活用したオンデマンド型地域公共交通システム構築プロジェクト
https://www.youtube.com/watch?v=RSLotuyE8DE
事例に関する問い合わせ先
建設事業部都市計画課計画係
Tel: 0263-52-0689(直通)
E-mail: toshi@city.shiojiri.lg.jp
本事例についてのご要望
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