展開地域名: 広島県安芸郡府中町
解決すべき課題
■「広島都市圏で一番子育てしやすいまち」を目指す府中町。妊娠期から子育て期にわたる子育て家庭への切れ目ない支援を目的として、母親や家族が気軽に相談できるよう、2018 年(平成 30 年)より妊娠・出産・子育てに関する業務を一本化した相談窓口「子育て世代包括支援センター(通称 ネウボラふちゅう)」を町内2か所に設けている。
※「ネウボラ」は、”相談・アドバイスの場所”を意味するフィンランド語。妊娠期から子育て期にわたる子育て家庭を切れ目なく支援する仕組みで、約100年前にフィンランドで誕生した。
(府中町「広報ふちゅう 2018年10月」、「ネウボラふちゅう~妊娠・出産・子育ての相談~」参照。)
具体的な業務としては、母子健康手帳交付時、赤ちゃん訪問(生後 2 カ月頃)、4 カ月児広場、1 歳 6 カ月児健診、3 歳児健診の 5 回の定期面談に加え、妊娠中期に 2 回、0 歳期に 3 回の定期面談や他施設での健康相談がある。また、産後ケア事業を新設し、妊娠中から保健師等の専門職による切れ目のない支援を行っている。
● 紙カルテを中心に業務を行っていたため、ネウボラ事業の開始による事業の拡充によって、紙カルテの選出・記録・収納や実績集計などにかかる時間が増大し、業務の効率化において以下のような点が課題となっていた:
① 事業拡大により紙カルテへの記録件数の増加、紙カルテが保管場所から離れることが多くなり、カルテを探す・収める時間が増大し、保健師の業務が逼迫していた。
② 産後ケア利用の際は、産後外出が大変な時期に、保護者が来所等で利用申請や利用後アンケートを行う必要があった。
③ 他施設で乳児健康相談を実施する際は、約 500 人分のカルテの持ち出しが必要で紛失のリスクもあった。
④ 要保護児童対策地域協議会(要対協)部署からの照会時は、電話で母子保健のカルテ情報を共有しており、時間を要していた(令和元年度照会件数:34 件)。
⑤ 要対協部署と月1回行うカンファレンス資料の作成(エクセル管理)に時間を要していた。
(ICT教育ニュース「両備システムズ、広島県府中町が子育て支援システム「ネウボラかるて」を採用」参照。)
解決の手法
■本課題に対処するため、母子保健カルテのデジタル化の導入により、より質の高い相談体制の構築を図る。
● ㈱ 両備システムズが開発した「ネウボラかるて」を導入(2021 年 4 月)。タブレット端末を使用して、訪問先や健診会場等で各種情報を登録・確認するためのシステム。業務システム(電子カルテ)、インフラ・セキュリティ、住民サイト(事前問診システム)という主に3つの要素で構成され、自治体の業務情報と、住民様が登録するWebサイトがシームレスに連携し、母子保健業務を包括的に網羅している。以下は3つの要素の詳細:
・業務システム(電子カルテ):
タブレット端末を使用して、訪問先や健診会場等で各種情報を登録・確認するためのシステムで職員の自席PCからも入力可能。要対協部署でも閲覧は可能。
タブレットであらゆる場所で母子保健業務が可能なシステムは全国初(広島ニュースTSS「母子保健の記録をデジタル化 「子育てしやすい町」府中町が全国初の試み」より。)。
・インフラ・セキュリティ:
業務システム・住民サイトを安全に利用されるために必要なインフラやセキュリティ対策
・住民サイト(事前問診システム):
住民側のスマートフォン・PCより問診回答を登録いただくためのWebサイト
(府中町「令和4年第3回府中町議会定例会 会 議 録(第3号)」参照。)
<ネウボラかるて>
従来は紙で参照していた個人の健診履歴の情報を、セキュリティを確保したタブレットを使用して、訪問先や健診会場など、これまで健康管理システムを使用できなかった場所においても情報照会や入力が可能になり、自治体職員様の情報収集時間の短縮と情報漏洩や消失のリスクからの解放を実現する。
住民側は、申請や予約がスマートフォンなどで行え、自治体職員側は、セキュリティを確保した通信環境でタブレットを使用することにより、健診結果・面談結果などの経緯を踏まえた面談を、あらゆる場所で実施することが可能となる。
(株式会社両備システムズ「子育て支援システム「ネウボラかるて」が広島県府中町にて採用」参照。)
解決における工夫点
ネウボラかるての母子保健データは、福祉、教育などのデータとも連携し、AIを活用したデータ分析で、児童虐待などのリスク予測にも貢献している。
(ICT教育ニュース「両備システムズ、広島県府中町が子育て支援システム「ネウボラかるて」を採用」、広島ニュース TSS「母子保健の記録をデジタル化 「子育てしやすい町」府中町が全国初の試み」参照。)
事例による成果
① 業務の効率化によりネウボラでの切れ目のない相談支援の充実
・カルテ整理、実績集計、カンファレンス資料作成、要対協との情報共有にかかる時間が短縮され、保健師の相談業務時間が確保できようになった。
・同一世帯のきょうだいの母子保健情報が瞬時にわかり、それまでの相談経緯を踏まえた支援ができるようになった。
② カルテの安全な運搬、保管場所の削減、災害対策
・様々なセキュリティ対策を講じることで、タブレットの持ち出しのみでカルテ情報へ安全にアクセスできるようになった。
・電子化されたカルテ保管場所が不要となり、自然災害等によるデータ消失も防ぐことができるようになった。
③ 保護者の負担軽減
・保護者のスマホ等から産後ケアのオンライン申請ができるようになり、利便性が向上した。
・集団事業再開時には、問診票の持参が不要となり、相談支援の事前準備が可能となった。
事例の継続性
継続運用中
事例の運用期間
2019 (令和3)年 4 月~継続運用中
参考資料
本事例は、「厚生労働省 母子保健電子カルテシステム(ネウボラかるて)の取り組みについて」を中心として、以下の資料を参照して編集しています。
※ 以下の資料の参照先は、調査時点でのものです。参照先の構成によっては、リンク切れとなっている場合があります。あらかじめご承知おきください。
■厚生労働省
・母子保健電子カルテシステム(ネウボラかるて)の取り組みについて 令和4年11月30日
https://www.mhlw.go.jp/content/11908000/001017611.pdf
■府中町
・ネウボラふちゅう~妊娠・出産・子育ての相談~ 掲載日:2023年2月1日更新
https://www.town.fuchu.hiroshima.jp/site/kosodate/22221.html#:~:text=%E5%BA%9C%E4%B8%AD%E7%94%BA%E3%81%A7%E3%81%AF%E3%80%81%E5%A6%8A%E5%A8%A0%E6%9C%9F,%E6%A1%88%E5%86%85%E3%82%92%E3%81%97%E3%81%A6%E3%81%84%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82
・令和5年11月17日 こども家庭庁が来庁 2023年11月17日更新
https://www.town.fuchu.hiroshima.jp/site/mayor/43967.html
・令和4年第3回府中町議会定例会 会 議 録(第3号)
https://www.town.fuchu.hiroshima.jp/uploaded/attachment/23047.pdf
・広報ふちゅう 2018年10月
https://www.town.fuchu.hiroshima.jp/uploaded/attachment/10069.pdf
■株式会社両備システムズ
・子育て支援システム「ネウボラかるて」が広島県府中町にて採用 2022.03.17
https://www.ryobi.co.jp/news/2022/20220317-1
■ICT教育ニュース
・両備システムズ、広島県府中町が子育て支援システム「ネウボラかるて」を採用 2022年3月22日
https://ict-enews.net/2022/03/22ryobi/
■広島ニュース TSS
・母子保健の記録をデジタル化 「子育てしやすい町」府中町が全国初の試み
https://www.youtube.com/watch?v=2-YCKpLy2Qg
関連する図表・動画
● 広島ニュース TSS
・母子保健の記録をデジタル化 「子育てしやすい町」府中町が全国初の試み
https://www.youtube.com/watch?v=2-YCKpLy2Qg
事例に関する問い合わせ先
福祉保健部 子育て支援課
お問い合わせフォーム:https://www.town.fuchu.hiroshima.jp/form/detail.php?sec_sec1=9&check
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